*こちらはオリジナル小説サイト「Return Road」の管理人まるさんに頂いたキリリク小説です。

秋の味覚 前編

 ここは、私立・虹ヶ丘高校。ただいま昼休みの真っ最中。

「最近、数学の課題難しくない?」
「それわかる〜」
「そう?私はそうでもないけど…」
「それはあんたが頭いいからでしょ!!」
「ひどいなー。努力してるって言ってほいな」
「わかんなくても、あんたには完璧なお兄ちゃんがいるじゃない!!」
「うちの馬鹿兄とかえてほしいくらいだわ」
「そう?」
「そうだよ〜。いいよね〜」
 とまぁ、このような会話ができるのも昼休みの醍醐味であり、世にいう女子高生であるからでもあるのだろう。
 入学してから一年がたち、二度目の春を迎え、学校生活はもちろん、寮生活も板についてきたこのごろ。南校舎二階、2―Aの教室では多くの生徒が食事や会話にいそしんでいる中、三人の女子生徒が机同士をつなげて弁当を広げ、このような会話を楽しんでいた。
 三人は同じ弁当箱で、蓋に桜寮と印刷されていることから、どうやら弁当は、寮母さんの手作りらしい。

「そういえば、もう秋だね〜」
 あらかたの食事を終え、しばらく他愛もない話が続いていると、三人の中の一人、佳枝が 学年を区別する、青いリボンの形を整えながら、窓の外を見て呟いた。
「そういや、もうそんな季節か・・・」
 ここ曲がってるよ、と向かい側の佳枝がリボンを整えるのを手伝っていた巴も、つられるように、窓を見る。
 赤々と葉をつけた広葉樹は、窓からの景色ををほとんど占めている。
 しかし、その中にもすっかり葉を散らしてしまった木もあれば、まだ青々としている葉を見せびらかすように茂らせているものもある。
「ふーん・・・そういうもんかね」
 感傷的になりかけていた二人の雰囲気をぶち壊すような冷めた声で、二人の見ている窓を 振り向いて見やったもう一人の少女、潤は言った。
「「潤!!」」
「なっ、何よ」
 鬼も吃驚の形相をした友人二人の気迫に、何か恐ろしいものを感じながら、潤は座っていた椅子ごと、少し後ろに下がった。
「まったく。あんたに情緒ってものを期待した私が馬鹿だったわ」
「わたしは何となく予想してたけど、それ以上ね〜」
 呆れたように言う巴に、おっとりとしながら、うんうんと相槌を打つ佳枝。
「なにさ、二人して!!すいませんねー、情緒ってものがわからなくて」
 二人の反応にむっとした潤が拗ねるように言う。
「何もそこまで言って無いじゃない」
「いーや。どうせ私は遅生まれで、皆より子供ですよーだ」
 こうなってはきりが無いと、潤の事をよく知る友人’sは、彼女の機嫌を直そうと、違う話題を切り出した。
「でもさ、秋と言えばやっぱりアレだよね〜」
「そうそう。やっぱアレがなきゃ秋じゃないよね」
 わざとらしく、いつもより大きな声で話す会話に、今までいじけていた潤が飛びついた。
「だよねっ、だよね!!皆もそう思う??」
((しめた!!))
 友人二人が心の中でガッツポーズをとっているとは露知らず、潤は目をキラキラと輝かせながらと会話を続ける。
「秋と言えばやっぱり―――」
「「「食堂の特別メニュー!!!」」」
 嬉しそうに三人揃って言った、この『食堂の特別メニュー』というのは、全寮制である、この虹ヶ丘学園の目玉でもある夕食の献立のことだ。その献立というのも、毎年その寮の学生による『今年の秋の味覚アンケート』の結果で、見事輝かしい一位の座についた食材が 出されるという、一般的に見れば単純なシステムではあるが、この道四十年のベテランの食堂のおばちゃんたちの手にかかれば、例え材料がどんなに質素であろうと、三ツ星レストラン。いや、五ツ星レストランほどの、秋の味覚をふんだんに使った料理が味わえる、学生にとってはまさに夢のような企画なのだ。
「去年は栗だったから、栗ご飯がメインだったよね〜」
 彼女達は一年前の出来事を懐かしそうに思い起こした。

 日に日に目立ってくる、先輩達の浮かれように首をかしげながら迎えた当日。
 その日も仲良く夕飯を食べに食堂へとやってきた三人を迎えたのは、カウンターにずらり と並ぶ、人・人・人の行列だった。
 後から来た同級生も、皆何事かと目を丸くして見ていると、最後尾に並んでいた先輩の一人が、このシステムの事を丁寧に説明してくれたのだった。

「あれは凄かったよね〜」
 佳枝の発言に、二人とも大きく頷く。
「今年は何だろうね・・・」
 昨年味わった栗ご飯はまさに格別。それならば今年は何なのだろうと、自然と選ばれる食材にも期待が募る。
「えと、去年が栗で〜その前は秋刀魚だったって聞いたから〜」
 先輩から聞いた情報を、佳枝が一つ一つ指を折りながら確認していく。
「流石に一昨年と同じのは無いだろうし―――その二つは除外か・・・」
「何で?」
 佳枝の確認に対して言った潤の言葉に疑問を感じ、巴は尋ねた。
「だって今の三年生は一昨年。つまり、一年生でそのメニューを食べてるでしょう?」
 説明口調で話す潤の言葉に、ふむふむと巴と佳枝は聞き入る。
「そうなら、話は簡単。せっかくのスペシャル企画なのに、たったの三回という限られた回数のうち、二つを同じものにする?私なら、まず無いね」
「成程〜」
「はあー。あんたがそこまで考えてるとは・・・感心ものだわ」
 それもそうだと、納得する二人。
 そうでしょう?と、得意げに言う潤はこの時、巴の発言が遠まわしに自分を馬鹿にしているだなんて思ってもいやしない。
「自分で考えた考察だけど、やっぱ私は秋刀魚がいいな・・・どうだろう?」
「難しいところよね。三年生が、一昨年の感動をもう一度!ってなるならありえない事もないわよね」
「私は牡蠣かな〜」
「おおー。なかなか贅沢なところつくわね」
「そういう巴は〜?」
「私?私は―――――――――」
 話に花が咲き、わいわいと楽しむ三人組。
「あっれー?潤ちゃんじゃん♪何々?盛り上がってるねー」
 そこに現れたのは、赤いネクタイの男子生徒だった・・・・・・・


 上にも記述していますが、この小説は「Return Road」のまるさんから頂いたものです
 この小説に出ている人物は、どうやら新連載予定のキャラ達だそうで、その連載が始まるのも楽しみですねぇv
 後編を書いていただいた際にも、張り切って強奪に行こうと思ってます(イヤ…キョカハモラッテマスヨ?


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