*こちらはオリジナル小説サイト「Return Road」の管理人まるさんに頂いたキリリク小説です。

秋の味覚 後編

 話に花が咲き、わいわいと楽しんでいた潤・佳枝・巴の三人組。
「あっれー?潤ちゃんじゃん♪何々?盛り上がってるねー」
 そこに現れたのは、赤いネクタイの男子生徒だった・・・・・・

 ・・・・・・・・・・
 先ほどまで盛り上がっていた会話はどこへやら。急な訪問者に驚いた彼女達の間に、しばしの沈黙が流れた。
 それもそのはず。此処、私立・虹ヶ丘高校では、学年ごとに男子はネクタイ、女子はリボンの色が決められているのだ。
 現在は最上級生の三年生から順に、赤・青・紺となっている。
 そいうことで、赤いネクタイをした、この男子生徒は三年生ということで、本来ならば2−Aという下級生の教室に、いるはずの無い人物が現れたことが、彼女達が驚いた理由なのである。
「・・・神崎先輩、何でここにいるんですか?」
 そんな沈黙が流れた中、真っ先に口を開いたのは潤だった。
 その男子生徒、神埼先輩こと神崎透(かんざき とおる)は潤の兄、小海修一(こうみ しゅういち)の友人であり、この高校の生徒会書記というちょっとした有名人でもあるのだ。
「食堂で昼飯食って、教室戻ろうとしてたら、友則がレーダーが何とかって言い出してさ。ふらふら歩いていくからその後追ってきたんだ」
「で、たどり着いたのがここだったってわけなんですか〜」
「そうそう」
 続いて話しかけた佳枝の言葉に大きく頷く神崎。
「ってことは、勿論レーダーとか言ってた・・・・・」
「友則もいるよ?大丈夫!ちゃんと修一がついてるから!!」
「そんな問題じゃない!!」
 珍しく今まで大人しく話を聞いていた巴が、わなわなと体を震わせ、声を荒げた。
「神崎先輩!お願いですから、今すぐその御一行で教室に戻ってください! じゃないと・・・・」
 続けざまに早口で神崎に詰め寄る巴。
「透〜?やっぱり俺のレーダーは間違ってなかっただろ〜?」
「おいっ、廊下で大声を出すな!」
 しかし、その言葉はむなしくも、新たな訪問者によって、かき消された。

 騒がしさと共に現れた男子生徒達は、教室に入るなり潤達のいる場所へとやって来た。一人はニコニコと笑みを浮かべながら、もう一人はその人物のせいか疲れたような表情でいた。
「お〜。潤ちゃんに佳枝ちゃん、そして我が愛する妹よ!!久しぶりだな」
「・・が・・・・」
「ん?」
「誰がお前の愛する妹だ!!こんのバカ兄貴っ」
 ニコニコとしていた男、笠井友則(かさい とものり)は巴の姿を見るや否や、手を広げ、巴に向かって近づく・・・・。が、その行いも虚しく、するりと抜けられた上に熱烈なアッパーをくらってしまった。
「ふっ、お前もそろそろ反抗期か」
「誰のせいだ!?」
 ギャーギャーと喧嘩を始めた二人。
「修一、止めてあげたら?」
 神崎が笠井と一緒に来た、小海修一に言う。
「・・・もう俺には無理だ」
 頭を抱え、溜め息を吐いた修一。それもそのはず、彼と笠井は、異常と言えるほどの長い付き合いの幼馴染で、更に高校の寮さえも同室だと言うのだから、彼の苦労は計り知れないほどなのだ。
「まあいいや。そんなことより、さっき盛り上がってたけど何の話してたの?」
 教室内ならまだしも、廊下にまでも迷惑がかかっている兄妹の喧嘩を、そんなことよりで片付けるのもどうかと思うが、彼等はほっとくようだ。
「食堂の特別メニューについてですよ〜」
 佳枝が近くで行われている喧騒をものともしないように、おっとりと言う。
 そんなこんなで、集まったメンバーで『秋の味覚』について語り始めたのである。

『秋の味覚といえば』
「やっぱ栗っしょ!!やっぱ最後にもう一度食いたいよな〜♪修一は?」
 うきうきと栗への熱い想いを語った神崎は、隣りにいる修一に話題をふった。
「え、俺?」
 急な事に驚くも、そうだな・・・と、顎に手をあて、しばらく考えた修一は
「…やっぱ秋刀魚かな?」
 と思い付いたように言った。この話の流れから、修一の隣りにいた笠井に視線が行く。いつの間にやら巴との喧嘩を終え、何事もなかったかのような顔をしている。
「なになに?俺?俺はねぇ――――――woman!!」
「「「「「??!!」」」」」
 問題発言とも言えよう言葉に、笠井を除いた五人の間に、一瞬で空気をも凍る沈黙が走った。
「…寄るな、触れるな、近付くな!!俺の妹の半径一メートル以内に入るな!!」
 沈黙の最中、真っ先に行動を起こしたのは修一だった。いつもの冷静な彼とは違い、笠井を危険視し、妹である潤を自分の後ろに隠すようにして笠井の前に壁になるようにして立っている。
「やだなぁ〜冗談だよっ」
 その様子を見て面白がっているのか、からからと笑う笠井。
 しかし周囲の一歩引いた反応からして、全く信用されてないらしい。
「お前が言うと本当みたいだからやだ」
「そんな〜。修一君ひどい〜」

 憩いの時間だったはずの昼休みの面影はもはや無い。なんの話をしてたのかと、一人思う潤をよそに、昼休みは刻々と終わりに近いていく・・・・
 どうやら、この人達は、静寂という言葉を知らないらしい。


 上にも記述していますが、この小説は「Return Road」のまるさんから頂いたものです
 後編も書いて頂けたのでいそいそと強奪してきましたよ
 過剰反応する兄やら妹やら読んでて楽しいですねぇv
 ブラコン、シスコンはうちのサイトにあまりいないのでなんか新鮮な感じです

 ではでは、最後になりましたがこの場を借りて、まるさん、キリリク受けて下さって有難う御座いました!


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