*こちらはオリジナル小説サイト「Return Road」の管理人まるさんに頂いたキリリク小説です。

 毎朝、毎晩冷え込む日々が続き、人々がぬくぬくと、暖をとるための手段に新しい暖房器具を買おうか。とか、やっぱり冬はコタツに限るね。などと、思い思いに思考をめぐらしていたその頃、ある事件は起こった・・・。

風邪のおかげ?

 事の始まりは十二月上旬。急に冷え込んだ環境のせいか、住民の大半が寝込んでしまっていた。冬の初めにいそいそと準備していたコタツがやはり悪かったのか。などと考えられるのならいいほうである。それくらい、ここ、またたび荘では風邪が大流行していた。
 そんな築○十年というアパートを下宿にしている僕の忙しくちょっと温かい冬の思い出である・・・・・

「ごめんね。今日久しぶりにバイトが休みだったんでしょ?・・・ケホッ」
 同じくまたたび荘に住んでいる五月さんの看病をしていると、寝ていた当の本人が申し訳なさそうに口を開いた。
「いや、かまわないですよ。もう慣れっこですから」
 その言葉に、余計な心配をかけまいと僕は笑って言い返した。
 五月さんは、旦那さんと小学4年生になる息子さんとの三人で暮らしていて僕がここに引っ越してきたときから、家族総出で引越しの手伝いをしてくれたり、僕の事を心配してか、夕飯のおかずをおすそ分けしてくれたりなどと日ごろから何かとお世話になっている人だ。
 そんな親切な家族が困っているのなら助けるのが恩返しとでも言うのだろう。
 風邪を引いた五月さんが家事が出来ないので心配で看病をしたいが、会社を休めない旦那さんの諒さんから相談を受け、僕は今に至るのだ。
 勿論、諒さんは少しほっとしたように会社に出勤したし、息子の和樹くんももう学校に登校した。二人ともよっぽど心配なのだろうか。和樹くんは友達としていた遊ぶ約束を断って早く帰ると言っていたし、諒さんは仕事を早めに片付けて帰るといっていた。
(もし、残業なら上司を脅してでも帰ってくると言ってたし・・)
 とっても憧れる家庭だなーと本当に思う。諒さん曰く、今まで苦労してきたから余計絆が強いんだろうな、だとか。何か色々あったらしい。

 それよりも、問題は五月さんの風邪だ。ここのところ、このまたたび荘内で風邪が大流行しているのだ。しかも、住人の大半が一度は寝込んだのだからその風邪の影響も相当なものらしい。
 何を隠そう、この僕も先月この風邪にやられて寝込んでしまったのだ。
 その時も五月さん一家に物凄くお世話になったものだ。

 五月さんは、僕の作った御粥を食べてから薬を飲んでいたので、今は寝ている。
 そして僕は、壁にかかっている時計を横目で見た。そろそろ四時を過ぎるから、小学校から和樹くんが帰ってくる頃だろう。五月さんもまだ寝てるだろうからその間にスーパーに買い物に行って・・・
 と、主婦のような思考を巡らせていると、トントン、と軽やかなリズムと共に走ってきた和樹くんが帰宅した。
「お母さん、お兄ちゃん、ただいまっ。」
「お帰り、和樹くん早かったね」
 このアパートに住む人間で、和樹くんと一番年が近いからか、和樹くんは僕のことをお兄ちゃんと呼ぶ。何だか実家にいる妹のようで懐かしい気分になってしますのはホームシックか?・・・なんか違うな。
「お兄ちゃん、お母さんどう?」
 少し息を切らして帰ってくるなり、和樹くんは五月さんの方を除き見る。
 やはり、諒さん同様五月さんのことがかなり心配のようだ。
 こういうところを見ると、やっぱり子供とというは純粋で愛らしいと思う。
「んー。今は安定しているけど薬の作用で今は寝てるよ」
「そっか。ね、今日の晩御飯お兄ちゃんが作るんでしょ?ボクも手伝う!」
「よし、じゃあ今のうちに買い物行こうか」
「うん!!ボクも手伝ってお母さんにおいしいもの食べさせるんだ!!」

 それから買い物から帰ってきた僕達が一緒に料理しているところを見て、
「あらあら、まるでほんとの兄弟みたいね。うふふ」
 と、様態が良くなって起きていた五月さんに言われてしまった。
 弟か・・・僕には妹しかいなかったから何だか嬉しいな。

「ただいま」
「あ、諒さんおかえりなさい」
「おかえり!お父さん!!今日の晩御飯はボクとお兄ちゃんの合作だよ」
「おおっ、そうか〜。それは楽しみだ!」
 嬉しそうに玄関の諒さんのところに駆けて行った和樹くんの頭をなでると諒さんはまっすぐ五月さんのところに顔を見せに行った。
「お帰りなさいあなた」
「もう大丈夫なのか?」
「ええ。二人が頑張ってくれたからかしら?」
「かもな。兄弟みたいだしな」
 にこやかにそんな話題をする夫婦二人。
 その後、僕と和樹くんの作った料理を囲んでの夕食は、そんな話題でほのぼのとした会話が続いた。

 そんな中、僕は何だか自分がこの家族の一員のような錯覚に陥ってしまった。
 そういえば、引っ越してからまだ家に連絡を入れていなかった。
 ・・・今日の夜あたりにでも実家に電話するかな。
 家族の温かさに浸りながら、こんなことを思ったのも、風邪のおかげ?
 と、そんなことを思ったこの冬―――――――――


 上にも記述していますが、この小説は「Return Road」のまるさんから頂いたものです
 こちらはまるさんのサイトの2000hitに際してリクエストさせて頂いたもので、ほのぼのしていて癒されますなぁv
 世間がノロウイルスで騒いでいた頃に、流行っているようなのでウイルスに関連した小説を!というよくわからないお願いをしたのですが…
 こんな心温まるものを頂けるとは思いませんでした。
 基があのノロウイルスなのにv

 ではでは、最後になりましたがこの場を借りて、まるさん、2000hitおめでとう御座いました!
 そして、リクエスト受けてくださって感謝です!!


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