拍手小話二:「役に立たない男ども」
ムーンブルク国の王城から西へ向った先、長く長く続く砂漠を行く者達がいる。男二名、女一名という編成である。
彼らは、かつて世界を救ったというロトの末裔達だ。それぞれ、ローレシア国王子リアス、サマルトリア国王子スケルタ、ムーンブルク国王女アイリという立場と名を冠している。
黙々と足を動かして砂漠を行く彼らに、近くに生えていた植物が突然動き出し、襲い掛かった。巨大な花弁を揺らしながら、蔦をうねらせて砂の上を動き回る。マンイーターという名の魔物である。
リアス達は、あるいは腰に差した剣を抜き、あるいは魔法を操るために身構えた。
そして――
「はぁ!」
まずはリアスが瞬時に踏み出し、剣を薙ぐ。それにより、マンイーターの伸ばしていた蔦が数本切れ、人を食らうその植物は、怖じて後退する。
そこに追い討ちをかけるように、
「バギ!」
アイリの魔法が炸裂した。
風の刃がマンイーターに迫り、切り刻む。すると、生の宿る特異な植物は動きを止めて倒れた。完全に息の根を止めたようである。
しかし――
がさがさ。
新手が現れた。倒れたばかりのものとは違うマンイーター達が、もそもそとリアス達に近づいてくる。
リアスは剣を握り直し、近づいてきている植物に自分から詰め寄る。そして、手にした得物をまたは振り下ろし、または薙いだ。
それによりマンイーターの群れは寸の間動きを止め、そこに――
「バギ!」
再び風が舞った。
しかし、今度はそれのみで魔物達がが完全に動きを止めることはなかった。彼らの動きは緩やかで、今にも倒れそうでありながらも、勇猛果敢にしぶとく向ってくる。
それゆえ、
「ギラ!」
スケルタが閃光を放った。それにより、一匹のマンイーターが紅蓮の炎に包まれ、いよいよ息の根を止める。
「よっし!」
「一辺死ね」
がしっ!
嬉しそうに声を上げたスケルタに、アイリが笑顔を浮かべつつ暴言を吐いた。そしてそれに留まらず、拳が飛び出た。
「い、いたいいたい! ちょ、アイリ。何だよ!?」
「今にも死にそうな奴に魔法まで使って倒して、それでなおかつ喜んでるなんて、スケルタは面白いですね。一辺と言わず、百辺ほど死んでみますか?」
げしげしげしげし!
何度も何度もスケルタを蹴りつけるアイリ。非常に楽しそうに笑んでいる。
「いたっ! いたっ! ちょ、やめ、いてぇ!」
「はっはっはっ! 馬鹿だな、スケさん!」
痛がっているスケルタを横目で見つつ、リアスは笑った。そして、目の前で死に掛けていたマンイーターを力いっぱい斬りつける。
ちなみに、斬り伏せたばかりの植物の直ぐ側には、元気いっぱいに動いている別の植物がいた。
「……あんたも人のことは言えないけれどね、リアス」
げしっ!
アイリは呆れたように息をつきながら呟き、地に横たわるスケルタの背中を勢いよく踏みつけた。