不良騎士見参! なあんて……

 街から街へ向う交通路沿い。若い男女が異形の物を相手に戦闘行為を繰り広げていた。
 棍を巧みに操る見目麗しい少年と、刀を華麗に舞わせる少女。そして、巨大な刀を変幻自在に操る長身の青年。
 皆、年若く見えるそのいでたちとは裏腹に、異形の物――動き回る巨大な植物を圧倒している。そして――
 どおおぉおおおぉぉぉおおぉおんっ!
 異形の物は、長身の青年の一撃を最後に受け、ゆっくりと倒れ伏す。
 青年は刀を大きく振り回し、構え、どこにでもなく流し目を送る。更に、口を徐に開き、決め台詞。
「不良騎士見参! なあんて……」
「カイル様は正真正銘不良騎士なんですから、わざわざ冗談めかされなくてもいいと思いますよ?」
 少女に遮られた。
 カイルは一瞬固まり、それからゆっくりと少女に疲れた瞳を送る。そして、
「ちょっとちょっとぉ…… リオンちゃん」
 そのように、苦笑いを浮かべながら抗議する。
 しかし、少女は――
「あ。王子ーっ! お怪我はありませんかー?」
 カイルの言葉を無視し、満面の笑みを携えて、少し離れた場所にいる少年の下へと駆けていった。
 カイルは仲良く話し込んでいる少年少女を見詰め、深いため息を吐き、
「不良騎士見参……でいいか。もう……」
 呟いた。