「やあ、こんばんは。星さん」
「月さん。こんばんは」
大きな顔を見つめながら、僕は挨拶を返した。
今日の月さんはどこか物憂げだ。
「どうかしたかい?」
「いやね、ひとつ頼みたいんだけど」
「構わないよ。他でもない月さんの頼みだ」
胸をたたいて応じると、月さんは小さく微笑んだ。
「ありがとう。実は太陽さんのことなんだ」
「太陽さん? 僕はお会いしたことがないけど……」
「今度、何とか会ってもらえないものだろうか?」
びっくりして、僕は思わず呆けた。
「僕が? 無理だよ」
「どうしても?」
「そりゃあ僕も会ってみたいけど、僕らは太陽さんには近づけない。同じ空にいれないもの」
太陽さんは偉大な魔法使いで、存在そのものが光の魔法を放ち続ける。
僕ら星は、彼の魔力にのまれてしまって一緒にはいられない。
「そう、だよね。いや、分かっているんだ。ただ、太陽さんがあまりにさみしがってたものだから」
「さみしがる? 太陽さんが?」
誰もが名をしる偉大な魔法使いである太陽さんが、まさかさみしがるなんて……
「ホントさ。僕は1日に1度彼と会うけど、さみしそうなんだ。自分はいつも独りだって」
「独り…… 昼間はみんな出てこられないから」
「そう。もちろん彼の偉大な魔力が原因だけど、でも……」
太陽さんは、それを望んでいないらしい。
それを鼻で笑って、何を贅沢な、とあざける気持ちがないわけじゃない。
僕は魔力が微少で、色んなところでバカにされる。それに比べたら……
でも、誰にも会えず、広い空に独りでいるというのはどういう気分なのだろう?
「この空は、あまりうまく出来ていないんだね」
「うん。そうみたいだ」
月さんは悲しそうに微笑んだ。
僕も、似たような顔をしていたと思う。