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ブックマン家

 みなさん、はじめまして。ぼくはミランダ=ブックマンと申します。数か月前に、ブックマン本家に迎え入れられてアデウス棟に移り住みました。その前は、アルヴェルト様やラディ君、シエスタ様やリタちゃんと同じ、ウィダミア棟に住んでいて、アルヴェルト様の下で働かせていただいていました。
 え? アデウス棟とかウィダミア棟とかって何だ、ですか?
 あ、そうですよね。ブックマン家の者でもなければご存知ないのは当然ですよね。ごめんなさい。
 ブックマン家の敷地には、大きく分けて3つの棟があります。アデウス棟は俗に本家筋と呼ばれる、ブックマン家の中でも特別な者が住まう棟。ウィダミア棟は知識人として活躍されている方が住まう棟。そしてあと1つ、アトルナ棟という場所があって、こちらは武勲をたてられた方が住まわれています。
 ぼくなどは知識人というほど立派なものでもなかったのですが、アルヴェルト様はお若くして王宮の学者様の右腕としてご活躍なされておりまして、婚約者のぼくとしてはとても誇らしくて…… うふふふ。
 ご、ごめんなさい。話がずれてしまいましたね。あははは……
 あのですね、それで、それぞれの棟には大体200人ずつくらいお住まいになられていて、その3割くらいがブックマン家の人間なんです。残りの7割は使用人の方々です。多少の変動はありますけどね。
 ただ、ぼく自身、本家入りして分かったのですけど、アデウス棟は少し事情が違うみたいです。アデウス棟は本家筋の方が現在30名ほど。それで、使用人もブックマン家の人間のうち凄く遠縁の者が就いていて、そのうえ10名しかいらっしゃらないんです。本家の秘密が漏れないようにそうしているようで、更には、出入りの人間も最小限にしているみたいです。
 だから、使用人はみんなとても忙しそうなんですよね。仲良くなったメイド―ーぼくの父のまたいとこの娘さんがいるんですけど、お喋りする暇もなくて少しさみしいですわ。本家の方って、ご当主のティアーガン様を筆頭に少しとっつきづらくて、あんまりお話もできないんです。
 あ、でもそういえば、本家入りする前は怖いなぁって思っていたラケシス様が、意外とお優しくて嬉しかったですわ。本家入りしてから1か月間は色々と教えてくださって、とても助かりました。
 そのラケシス様は、アルヴェルト様のいとこにあたるお方で、ティアーガンご当主様のご長子様、ラントヴァルト様のご息女様になります。弟君がお1人いらしたそうですが――
 あ! え、えーと、聞かなかったことにして下さい。すみません。
 それで、その、ですね…… あぁ! もうダメだわ。ぼくは喋りすぎると余計なことを口にしちゃう……
 そろそろ部屋に戻りますね。今度行く任務の準備をしなくちゃいけないんです。申し訳ないのですが、ブックマン家についてもっとお知りになりたい方は、ラケシス様にお尋ねいただければ、と思います。ごめんなさい。
 それではみなさん、ご機嫌よう。