31.願いの魔法

 あの時――

「姉さんが言ったんじゃないか! がつんとやれって!」
「やりすぎなのよ! なんで魔法なんて使ったの! 殺しちゃうなんて!」
「だって! ……だって」
 違う…… この子を責めるのはお門違いだ……
 あたしのせいだ。
 あれは、あたしのせいだった。
 あたしの無責任な言葉のせいだったんだ。

「姉さん。逃がした分は殺しておいたよ」
 ヒトを焼いた紅蓮の炎を背にしたあの子。
 その口から漏れた言葉にあたしは恐怖した。
 何があっても側に、たとえあの子を責めたとしても側にいるべきだったあたしは、それから――あちらの世界へいってから、あの子に一線を引いていた気がする。無意識にそんなことをしてしまっていた気がする。
 あの子は孤独を感じていただろう。
 だから、絶望を独りで迎え、希望をも独りで迎えた。
 現状はあたしが招いたのだ。
 無茶な方法で独り、ただただ一つの道を無理やり信じて進むあの子。

「明日はガツンとやったりなさい!」
 あの言葉――あの間違いだけだったなら、その後あたしがしっかりとあの子を支えていたなら、悲しい過去を抱えながらも、あたし達は共にいられたのかもしれない。
 辛い気持ちを抱えながらも、それを消すことはできないながらも、共にいて、不器用なりに笑顔で生きられたのかもしれない。
 それが叶わなかったのはあたしのせい……
 けど、もしまだ間に合うのなら――


 お願いします…… 神様……