一章:人と悪魔と精霊と
〜第五の犠牲者〜

 ぽたぽた。
 月明かりの中、二の腕や太ももから真っ赤な液体を滴らせ、人がか細い声で助けを求めている。
「……たす……けて……く……だ……」
 ざしゅっ。ぼとっ。
 右脚が地面に落ちた。
 四肢を失ったその姿は、残虐さを超えてどこか滑稽ですらあった。
 人は尊厳を奪われ、ただの物になろうとしている。
「……う……あ……」
 言葉すら失い、更には、瞳から光をも失う。
 命の灯火が消える。
 ざしゅっ。ぼとっ。
 地に転がった無機物には絶望の表情が浮かんでいた。しかし、それは正確ではない。それは既に物に成り下がったのだ。感情など無い。希望も絶望も感じ得ない。
 一帯を紅く染める六つのそれらは、肉片の集合体でしかないのだ。
「……五つ目……」