国営塾の裏手を黒き魔が駆けていた。闇よりも濃い漆黒のかいなが、既にいくつもの命を絡め取った。
かの者の行動に伴って、多数の人の子が地に伏す。戦線が保てない。
混乱が場を支配していた。
「第五小隊! 壁を崩すな! そちらには町民が! おい、お前! そちら側から回って、野次馬を避難させて――」
どおおぉんッ!
破裂音に伴って、警邏隊員たちが立っていた地面が陥没した。警邏隊の部隊編成が崩れた。
『ふん。飽きたな』
粗くなっていた隊の防壁の網を破り、悪魔が国営塾の正面へと飛んでいく。
黒き背が遠ざかっていく。
「ま、まずい! 追え!」
ブルタスが命を下すが、人間の足ではもはや追いつけないほどに、警邏隊員たちと悪魔との距離は離れてしまっている。
天の下を闇が疾走する。
「危ないッ! 避けろおッッ!!」
隊員の一人が叫んだ。
彼の視線の先には、女児と少女がいる。
「せ、セレネくん!」
「――っ! ヴァン先生!」
傍観を決め込んでいた人の子が、思わず駆け出した。