二章:光と闇
〜魔の言葉〜

 昼の陽の光さえ届かない地中の奥深く、蝋燭の火がゆらゆらと揺れ、微かな灯りがぼうと闇に浮かんでいる。その小さな小さな火に照らし出され、黒で満たされた地下空洞の中央に、漆黒のローブを身に纏った人の子がいた。
 揺らぐ灯りによって生まれる陰影が、より深い闇を生み出している。
『迷っているようじゃの、人間よ』
「……………」
 魔の言葉が人の心を侵す。
『神に惑わされるでない。奴は気まぐれじゃ。貴様も知っておろう。精霊の介入は救済ではなく、暇つぶしよ』
「……………」
 神は人を救わない。決して。
 だからこそ、人は闇を求めたのだ。
『人には神でなく悪魔が、悪魔には人が必要なのじゃ。のう?』
「……はい……」