二章:光と闇
〜変態奮起〜

 数刻後、ルーヴァンスがゆっくりと身を起こした。
「……うん? 僕はいったい?」
「あ、ルーせんせえ。起きた?」
 気づいた師に声をかけたのは、ソファに腰掛けてくつろいでいたヘリオスだった。
「ヘリオスくん…… はっ! ティアは?」
「……弟の身としては、不肖の姉にも気を配ってくれるとほんの少し嬉しいかなぁ」
「そういえば、セレネくんも居ませんね。二人ともいったいどこへ?」
 今さらながら気がついたらしいルーヴァンスに、ヘリオスが嘆息する。
「ティアリスさんの『相棒』を探しにいったよ。聞けば、トリニテイル術とやらを自由に操れる目処が立てば、例の事件も万事解決の運びだっていうからさ。オレらとしても協力は惜しまないつもりでいるんだよね。父さんやブルタスたいちょーにも協力を仰いだよ」
「ぼ、僕が居るでしょうに!」
「あんな様子見せちゃ、もうムリじゃん? 慣れてるオレでも引いたよ」
 暴走時の彼は、変人や変態という括りから逸脱し、もはや犯罪者のようであった。
 当然ながら、信頼されるはずもない。
「そんな! こんなに愛しているのに!」
「その愛は間違いなく重いよ……」
 ごもっともな進言を賜るも、ルーヴァンスは意に介さない。
「こうはしていられません! 今すぐティアを探し出して合体を!」
「合体じゃなくて『一体』らしいじゃん? 落ち着いて、せんせえ」
「いきますよおおおおおぉおおお!!」
 やはり、師は耳を貸さない。叫びながら駆けだした。
「はぁ…… ま。そろそろ相棒さがしも終わってるかもだし、大丈夫――だといいなぁ」
 仕方なさそうに息をついて、ヘリオスは腰を浮かせた。
 目指すは大聖堂前の広場だ。