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たったったっ!
街道から外れた森の中を駆ける影がある。影は木の根や枝に足をとられながら先を急ぐ。整備された道以外を行く機会が普段ないのだろう。見るからに危なっかしい。
「きゃっ」
ずさっ!
そこで、ついに倒れこむ影。修道服は土で汚れ、倒れた際にぶつけた膝からは血がにじむ。
しかし、影は――少女はきっと前を見据え、立ち上がる。先を急ぐ。痛みに足を止めている場合ではない、と。
ひっそりと目立たないよう、辺境の街や村を転々としていた数日間。そんな中、彼女はよくない噂を耳にした。神聖王国の聖都にある聖堂は信仰の魔女をかくまっていた。その罪を理由に、近々聖堂の教徒が全員火刑に処せられる、と。
(神父様はお救いできなかった。でも、皆まで同じにはさせない……!)
相変わらず危なっかしく駆ける少女の脳裏に浮かぶのは、幼い頃から彼女を見守り支えてくれた人々。その中の1人、父親のように大事に大事に想っていた者は、数日前に天に召された。床を彩った血の色は、未だ記憶に新しい。
(あんなことは、もう2度と起こってはいけない)
決意の光を瞳に宿らせ、少女は懸命に足を進める。既に疲労の蓄積は著しい。それでも、止まるわけにはいかなかった。
ばたっ!
再び倒れる少女。しかし、再度立ち上がる。
何度も倒れ、何度も立ち上がり、今や体はボロボロだった。それでも、まだ心は折れていない。気高く、明るい未来を信じていた。
「負けない…… 絶対に!」
「ええ。私たちが負けさせないわ」
ざわっ。
森が、木々がざわめいた。空間が歪む。
さあっ。
風が吹き、それと同時に、少女の目の前が裂けた。木漏れ日が照らすはずの空間に闇があった。
そして、そこには女が3人、男が1人、佇んでいた。
「……神? それとも、悪魔?」
「あはっ。どちらかといえば悪魔かもね。魔女だもん」
ふわふわとした黒髪の少女がおかしそうに笑い、言った。
対して、堅そうな髪質の赤毛の少年が、呆れたように反応を示す。
「いきなり不信感を買うようなこというなよ、レズ女」
「うっさい、オカマ」
「あぁ?」
険悪な雰囲気になる2名。
しかし、少年の傍らに赤毛の女性が、そして、少女の傍らに金髪の女性が寄り添い、各名をなだめた。
ぎゅっ。フルフル。
少年の袖を取り、首を振るう赤毛の女性。まなざしには非難するような意図が見える。
ふぅ、と息をつき、少年は両の手を上げた。
「紅蓮くんは大人しく反省したようよ。ルイちゃんも落ち着きましょうね?」
「むぅ…… わかりました。言霊ねーさま」
「ありがとう。さて、そろそろ空間を閉じねばね。皆、出て」
ゆるやかな風にさらさらと流れる金の髪。その髪を携えた女性は、修道服姿の少女と同じ大地に降り立ち、言った。
それに伴い、闇の空間に身を置いていた者たちは、一歩を踏み出す。
『閉じなさい』
すぅ。
空間の裂け目が閉じた。
「あなた方は……?」
「私は言霊の魔女と呼ばれる者。はじめまして、信仰の魔女」
言霊の魔女が手を差し出す。
少女――信仰の魔女は一瞬ためらい、しかし、彼女の手を取った。
ざっ。
魔女に支えられ、魔女が立ち上がる。
「ワタシは紅涙の魔女。あらかじめ言っとくけど、言霊ねーさまはワタシのねーさまなんだからね」
「ご姉妹ですか?」
少女は黒髪、女性は金髪。血の繋がりはあまり感じない。
「そういうのじゃなくて、お慕いするオネーサマってやつだ。適当に無視しといてくれ。僕は紅蓮の魔女。こちらは僕の姉――本当の姉さんだ」
言ったのは赤毛の少年。こちらは確かに、姉であるという女性もまた綺麗な赤毛をしており、面立ちも似通っている。
ぺこり。
女性が頭を下げた。そして、にこりと微笑む。
「あの、わたくしは――」
「信仰の魔女。貴女の名前は、それ。魔女同士は通り名で呼び合うものよ」
信仰の魔女の唇に右手の人差し指をあて、言霊の魔女が言った。
一瞬戸惑うが、信仰の魔女はこくりと頷いた。
「承知しました。では、言霊様、紅涙様、紅蓮様、姉君様と呼ばせていただきます。わたくしのことも信仰とお呼び下さい」
しんっ。
そこで静寂が訪れる。
「どうかいたしましたか?」
「いやーなんとゆーか、真面目なんだなーって。疲れそう……」
「不本意だが、同意」
うんざりした様子で呟いた紅涙の魔女と紅蓮の魔女。
信仰の魔女は不思議そうに首を傾げる。しかし直ぐに、我に返ったように向かっていた先――聖都方面へ鋭い瞳を戻す。
「皆様、申し訳ございません。わたくしは先を急ぎますのでこれで」
ぺこり。
丁寧に頭を下げ、信仰の魔女は再び駆けだそうとする。
しかし、言霊の魔女が彼女の肩をそっと押さえた。
『お待ちなさい』
「は、はい」
逆らい難い気持ちとなり、信仰の魔女は足を止めた。そして、ぼんやりと言霊の魔女を見つめる。
「貴女の事情はおおまかに理解しているわ。神聖国の聖都へ急いでいるのね。その都はここからどのくらい?」
「街道沿いを急げば1日程度で着きます。しかし……」
彼女の家族ともいうべき人々は、今にも火刑台にいざなわれるやも知れぬ身。1日で辿り着けることが救いにはならない。急がなければいけない。
「ならば、神から与えられた2本の足で向かっている場合ではないわね」
にこり。
微笑んだ言霊の魔女は、信仰の魔女の肩から手を放す。そして、何もない空間に瞳を向けた。
『開きなさい』
ざわっ。
再び、空間が裂けた。
「さあ、行きましょう。聖都へ」
ざわざわざわざわ。
聖都の広場では、数十名が磔にされていた。修道服ではなく、ぼろ布のようなものを着せられている。皆、瞳を閉じ、うつむいていた。
「ほほ。悪魔の手先を並べ、順番に火をつけてゆく。なかなかに面白い見世物よのう」
広場を見下ろす位置にて、女性が言った。おかしそうに口元を歪め、嗤っている。
彼女は神聖国の現女王――サディリーア=マイセン=イス=ヴァスカラ。つい数日前に即位した18歳の少女である。
集った都民は、戸惑いの瞳で受刑者たちを見ていた。
前王と王子を殺したという信仰の魔女に関していえば、重刑を与えることこそ真実だと、多くの者は考える。しかし、聖堂の教徒全員に罪があるかと問われると、皆首をかしげずにはいられなかった。教徒ら自身は罪を犯していない。その上、多かれ少なかれ、教徒らには皆、世話になっている。
とはいえ、敢えて新女王をただそうなどとは考えない。女王の狂気が自分に向かうことを恐れた。
ごーんごーんごーん。
時計塔の鐘が3度なった。刑を執行する予定の時刻だ。
「ふむ。信仰の魔女がのこのこやってくるかと期待もしておったが、所詮は悪魔の手先。かつての仲間なぞ知ったことではないか…… まあよい」
サディリーアはにたりと、残忍に笑んだ。
「祭りの始まりじゃ。さあ、火をつけよ!」
ぼっ。
執行人の手に握られた松明に火が灯された。
そしていよいよ――
すぅ。
その時、空間に裂け目が生じた。
『消えなさい』
さっ。
更には、突然現れた女性のひと言に伴い、松明の火が消え去った。
「な、何っ!? なんじゃ、貴様ら!」
「さあ、皆。出て」
女王の言葉など意に介さず、女性は自分の連れに声をかける。
そして、黒髪の少女が、赤毛の男女が、最後に、修道女が広場に姿を現した。
「!」
火刑台に縛り付けられていた者たちの顔に、驚愕の色が浮かぶ。
「皆、助けに参りました」
「さ、去れ! 悪魔の使い! 我らに構うな!」
修道女の言葉を受け、受刑者のひとりが叫んだ。その顔に、声にあるのは、憎しみでも恐れでもない。
「へぇ。シンコのお仲間は、狭窄的な狂信者ってわけじゃないんだ。助ける気がちょっと沸いてきたなー」
「魔女を気遣う信奉者、ね。僕の世界のやつらに見せてやりたいよ。ねぇ、姉さん」
こくり。
ざわざわざわざわ。
広場に響いた闖入者たちの言葉。ざわめきが生まれた。
「けどまあ、基本的に魔女は受け入れられないみたいだね。あっちの煩い観客をみる限り」
「魔女め! 仲間をつれてきおったか! わが父と兄のかたきじゃ! 騎士よ、あやつらを殺せぇ!」
かちゃかちゃかちゃ!
騎士が女王の言葉に従って駆けると、甲冑がうるさく音を立てた。魔女たちを鎧が囲む。
「サディリーア姫様!」
信仰の魔女が叫んだ。
「今は姫ではない。女王じゃ」
「ではサディリーア女王様。お聞かせ下さい。わたくしが大人しく死ねば、他の皆を助けていただけますか?」
縛られている者たちから呻きが漏れた。
信仰の魔女はかつて、信仰の聖女と呼ばれていた。その名は彼女にふさわしいと、聖堂の教徒の誰もが思っていた。彼女の性質は、まさに聖女のそれであったから。
「助けるか、とな? さて、如何しようかのぅ。わらわもちょうど心を痛めておったところじゃ。今や悪魔の傘下へ下ったとはいえ、かつては神ヴァスカラを奉じていた元同胞を手にかけることにはな」
「で、では!」
期待を込めた信仰の魔女の叫び。しかし、その期待は無残にも裏切られた。
「答えは、否じゃ! 魔女ふぜいがわらわに頼みごとなど片腹痛いわ! せいぜい絶望の中で死にゆくがよい!」
ひゅっ!
騎士のひとりが剣を振るった。信仰の魔女の首めがけて。
大地に血が降り注ぐ、その刹那――
『お止めなさい』
ぴた。
陽光を受け、きらきらと輝く金の髪。そのきらめきを携えた女性が――言霊の魔女が呟いた。
騎士は腕をぴったと止め、微動だにしなくなる。
「ルイちゃん」
そして、言霊の魔女は隣にいる少女、紅涙の魔女に声をかける。
『泣きなさい』
ばあんっ!
紅涙の魔女の瞳に涙が浮かび、それと同時に広場を衝撃が襲った。騎士たちが吹き飛ぶ。
「あはっ。ねーさまの言霊があると直ぐ泣けて助かります。これで魔法、使い放題」
「ぐっ!」
ひとりの騎士を水が包む。騎士は苦しそうにもがいた。
『緩まりなさい』
するっ。
教徒たちを縛っていた縄が緩まった。皆、ばたっと地面に倒れこむ。
たっ。
信仰の魔女が駆けより、彼らを支えた。赤毛の女性もまた続く。
と、そこでひとりの騎士が、紅涙の魔女が生み出した衝撃から立ち直り、赤毛の女性に向かった。携えた剣が、女性の喉元へ狙いを定める。
しかし――
ぼんっ!
女性と騎士を分かつように大地から炎が飛び出した。炎は天高く昇り、空を紅く染める。
「姉さんに何してくれる。蛆虫め」
「ひぃ」
睨みを利かせた少年――紅蓮の魔女の言葉を耳にし、騎士はがちゃっと倒れた。腰を抜かし、おびえている。
紅蓮の魔女は右腕をかかげ、巨大な炎の塊を生み出した。
「紅蓮様! お止め下さい!」
叫んだのは――信仰の魔女だった。
紅蓮の魔女も、騎士も、呆気にとられている。
「何、言ってんの?」
「殺してはいけません! その騎士様も我らと同じ、神ヴァスカラを奉じる者。話せばわかって下さります!」
ふぅ。
紅蓮の魔女がため息をついた。
「付き合ってられないよ。さて、死ね」
どんっ!
炎が騎士を包んだ。そして、小さな爆発を起こす。あとには消し炭だけが残った。
「そ、そんな……なんてことを……!」
目の前の光景に、信仰の魔女は涙を流した。
ばあんっ!
衝撃が広場を再度襲った。紅涙の魔女の涙が生み出す衝撃の波である。
「こ、紅涙様もお止めに――」
「ばかなこと言ってるとシンコちゃんも殺っちゃうよ、あははっ!」
ずんっ。
巨大な水の塊が生まれた。その中には、騎士のみならず聴衆も混じって収まっていた。皆、一様に苦しそうにもがいている。が、やがて動かなくなった。
「……あぁ。神よ」
瞳をそむける信仰の魔女。しかし――
『きちんと見なさい』
言霊がそれを許さない。
信仰の魔女は、焔と水が生み出す悲劇を見つめた。
「貴女の現実はこれまで、言葉が力を持っていて、言葉が争いを止めてくれていたのでしょう。けれど、これからの貴女の現実は違う。言葉は力など持たない。言葉はただの音でしかない。魔女は人を殺し、人は魔女を恐れ、やはり殺す。人が死んでいく光景は貴女のこれからの現実。目をそらしてはいけない」
ぼおぉお!
ばあぁん!
焔が人を焼き、水が人を吹き飛ばす。数百名もいた騎士は、もはや数十名となっていた。死の臭いが充満する。
「……これが、わたくしの現実?」
広場で騎士たちが死んでいくなか、サディリーア女王は騎士数名を連れて城へと向かった。
「ちっ。信仰の魔女のみであれば一斉にかかれば勝機があったものを、なんじゃあいつらは……!」
毒づき、サディリーアは唇を噛んだ。
すぅ。
再び空間が裂けた。言霊の魔女と信仰の魔女が姿を現す。
「女王様、おさがりを!」
かちゃ。
甲冑の騎士が女王と魔女たちの間に立つ。
しかし――
『どきなさい』
言霊の力を受け、皆道をあける。
「さあ、信仰ちゃん。貴女が決着をつけなさい」
すっ。
言霊の魔女が女王を手で示す。
信仰の魔女は、一歩を踏み出した。
「女王様」
「……………くっ」
女王は恐怖で顔をひきつらせた。そして、目まぐるしく考えを巡らせる。助かる道を探す。付け入るとすれば――
「聖堂の皆をお許し下さい。王子殿下のことは申し訳ございませんでした。しかし、あれは王子殿下が神父様を……」
サディリーアは、哀しみの宿る瞳を伏せた。
「……いや、兄上のことなどどうでもよい。兄上にも非があったことは、承知しておる。わらわはただ、悪魔に魅入られた哀れなる子に救いを与えようとしただけ。それだけなのじゃ」
信仰の魔女の瞳に希望が生まれる。
「で、では、聖堂の皆にはその必要はございません。悪魔に魅入られしはわたくし唯ひとり」
「……それが真であるのなら、聖堂の者どもには手は出さん。約束す――」
『本心を、述べなさい』
言霊が、女王に向けられた。
女王の顔に嘲りの笑みが広がる。そして女王は、狂気に支配され、哄笑した。
「ほほほほほほほっ! たわけたことを申すな。わらわを脅かす可能性のある者は、魔女であろうと聖女であろうと滅ぼす。聖堂の者どもは未だ、聖女を――お主を信じておる。邪魔なんだよっ! 地を這いつくばる蛆虫の分際で崇められおって! わらわの絶対の地位を脅かすもの。わらわを崇めぬもの。皆、殺すに決まっておろうがっ! きゃははははははははっ!」
聖女の瞳に哀しみが浮かんだ。
そして、魔女は力を解放した。
「サディリーア様。せめて苦しまず……神ヴァスカラの元へ召されて下さい」
ばぁんっ!
聖女の癒しの力が逆流し、魔女の破壊の力となり、女王の体が――はじけた。
聖都から遠く離れた街に、30名ほどが連れだってやって来た。街の人々は、劇団でもやってきたのかと物珍しげに見ている。
しかし、一行は彼らの構うでもなく歩みを進め、教会の前へと至った。
「ここに迎え入れて頂くとよいでしょう。身分は隠して、西方の戦に巻き込まれたことにでもしておきなさい」
「……世話になりました。魔女の皆様」
少しばかりわだかまりを感じさせる表情で、ひとりの男性が言った。
「あはっ。やっぱ魔女はお嫌い?」
「……それは、勿論。神を脅かす悪魔の使い、と伝えられおりますからな。ただ、勘違いしないで下さい。助けていただいたことには感謝いたしております。これから我らの聖女――いえ、信仰の魔女をお世話していただくことにも」
ぐすっ。
そこで瞳を濡らす信仰の魔女。
ぼろ布を身にまとった男女も、それぞれが悲しそうにうつむいている。
「皆、悲しむでない。我ら、神ヴァスカラを奉じている限り、なんびとも我らを引き裂けぬ。神父様がおられたなら、そう仰って下さったはずだ。我らが聖女。君も、今でも神ヴァスカラを信じているのだろう?」
「……はい! わたくしの心は、いつまでも神と共に。そして、神父様と、皆と共に在ります」
「うへぇ。レズ女の次は狂信女かよ。きも――ぐっ」
ぎゅっ。
小さく呟いた紅蓮の魔女の腕を、彼の姉がきつくちぎる。魔女は痛みに呻き、黙った。
「さて、そろそろよいかしら?」
「……ええ。これからわたくしはどこへ?」
「ひとまずは魔女集会所と呼ばれる、世界と世界の狭間へ向かうわ。そこで、これからの身の振り方を考えましょう」
「はい。言霊様、よろしくお願いいたします」
小さく微笑み、信仰の魔女は深く頭を下げた。
そんな彼女に、紅涙の魔女が抱きつく。
「かったーい。シンコちゃん、もっと砕けて砕けて。言霊ねーさまはその呼び方でいいけど、っていうか、あんまなれなれしくしたらワタシが許さないけど、ワタシのことはルイでいいからね。あっちのオカマ魔女はオカマとかシスコンでいいから」
「え、えっと、その」
「ざけんなっ!」
信仰の魔女が戸惑っていると、紅蓮の魔女が声を張り上げた。そして、紅涙の魔女と言い合いを始める。
言霊の魔女が口元に手をあて、笑った。
「うふふ。またあの2人は。元気なんだから」
その言葉を受け、信仰の魔女もまた微笑む。聖都での戦いから、彼女は紅涙の魔女と紅蓮の魔女に恐れを抱いていた。これからも抱き続けるかもしれない。けれども、恐ろしい性質が彼らの全てではないのだ。そう気づいて、微笑んだ。
「さて、じゃあそろそろ――」
すぅ、と息を吸う言霊の魔女。魔力が彼女に集う。
そして――
『開きなさい』
空間が裂け、闇が現れた。
言霊の魔女、紅涙の魔女、紅蓮の魔女、その姉が闇に足を踏み込む。
そして最後に、
「……我ら、神ヴァスカラの名の許に。君の幸せを祈っているよ」
「わたくしも、です。これまで、ありがとう、ございましたっ」
信仰の魔女が闇に包まれ、消えた。