第3章 School Wars
強固なる意志

 クレセント学園女子寮の窓辺で、レスティア=ルナティックは頬杖をついて夜空を見上げていた。夜天には大きく丸い月が浮かび、此岸の出口のようにそこに存在していた。
「クレイム。レディの部屋に無断で入るのは如何なものかしら」
 部屋の中に気配を感じて、レスティアは窓の外に視線を向けたままで、侵入者へ声をかけた。
 入り口に佇んでいた男性は肩を竦めて苦笑した。
「定例報告の時間ですよ。それはそうと、決勝進出おめでとうございます」
「ソレイユ家は文官揃い。負ける要素など皆無よ。ブックマン家はどうかしら」
 レスティアは月を見上げながら無感動に言葉を紡いだ。
 クレイムは再度苦笑し、息をついた。
「賞品が魔書なのは間違いないようです。あとは、僕らが望む力があるかどうか……」
「そう」
 新たな情報が開示されても、レスティアは興味を示さなかった。
 クレイムが再三のため息をつく。
「無気力なご様子で。まあいいでしょう。明日は頼みますよ」
 彼はそう口にしてから、ゆっくりと暗闇に姿を消した。
 レスティアは振り返ることもなく、月を見上げ続けていた。

 ラトワイズ王国祭が催されるのは5日間だ。5日目は終焉の儀が主だった行事となるため、4日目午後の対抗戦決勝は、実質的な最後のイベントである。マグナカルタ市民からも観光客からも注目を浴びる。
 そのような事実だけで暗澹たる思いを抱いていたラディアムは、本日の決勝戦の相手がトゥーダ村で相対したレスティアであるという新たな心配事で心が潰れそうだった。
「大丈夫? ラディ」
「……あんまり……」
「まあ、気楽にいろよ。俺とアルマで終わらせるし、万が一、俺らが負けたら、迷わず棄権していいからさ」
「……う、うん……」
 左隣のアルマリータと、右隣のラドクリフが心配そうに声をかけてくるが、ラディアムは生返事である。彼が本家筋として負うべき使命を思えば、ラドクリフが言うように容易く棄権するわけにもいかない。
 ラディアムが戦うとなれば、シエスタに習った簡単な短縮詠唱を使うしかない。ラスターに習った剣は、即席すぎて実戦で役に立つとは思えない。同じく即席とはいえ、短縮詠唱は実際に雷が放たれるので、相手を無効化することが何とか可能だ。まぐれ当たりでの勝利が全くないとはいえない。
(トネール・カルラ…… イメージが大事……)
 シエスタの言葉を胸の内で何度も繰り返し、彼は祈るように両の手を握り合わせた。
 その時、兵士が各陣営の先鋒を呼び寄せた。
「ハイドロウ学院先鋒ラドクリフ=ブックマン。クレセント学園レスティア=ルナティック――」
「クレセント学園は、わたくし以外の2名は棄権いたします」
 突然、レスティアが宣言した。
 他の2名は特に反応を示すこと無く、一礼して観客席へ向かった。その瞳に光は無かった。感情が欠落してしまったかのようだった。
 闘技場全体がざわめく。
 続けざまにレスティアが声高に提案する。
「加えて、わたくしは決勝戦を、3対3の総力戦とすることを進言いたします」
 更なるざわめきが一帯を満たした。
 クレセント学園側が2名棄権した上で3対3ということは、実質、1対3ということになる。
「……なんか嘗められてるね、あたし達」
「だな」
 アルマリータとラドクリフは、厳しい目つきでレスティアを睨み付ける。
 一方で、ラディアムは戸惑った様子だ。
 兵士が駆け足で闘技場の隅へ向かった。相談に向かったのだろう。
 その間にも、観客席から野次が上がる。レスティアの傲慢を批判する声。反対に賞賛する声。そして中には、ラディアム達に受けろと促す声もあった。
 学園対抗戦は、言ってしまえば娯楽である。少年少女が日々の研鑽を披露し、観客はそれを無責任に楽しむ。そういった催しなのだ。
 ともすれば、この流れでレスティアの提案を却下するのは難しいだろう。
「レスティア=ルナティック。君が不利になるが、構わないのだな?」
「愚問ですわ」
 戻ってきて尋ねた兵士に、レスティアは微笑みと共に応えた。自信に満ちた様子は、より一層、観客達の歓心を買った。
 アルマリータとラドクリフは不満げにしながらも、反対しない。自主的に1対1で戦えばいいだけのことだ。
「まずはラドね。あたしは万が一に備えて、ラディの護衛しとくから」
「ああ。頼む」
 簡単に打ち合わせを済ませた2人は、ラディアムを連れて開始位置へと向かう。
 彼らと相対する位置で、レスティアが赤毛をなびかせて佇んでいた。口元に軽く握った右手を当てて、可笑しそうに微笑みを浮かべていた。
「あら。目を合わせてくれないのね。嫌われてしまったかしら」
 ラディアム達は揃って、レスティアの視線を避けるように、下を向くことを心がけていた。カルディーナが言っていた統制眼(コントロール・アイズ)に対する策だった。この程度で完全に防げるとは限らないが、他にやりようもなかった。
「残念」
 彼女が楽しそうに呟いた時、兵士の号令で試合が始まった。
 アルマリータとラディアムが後退する一方で、ラドクリフが長剣を携えてレスティアに突進した。レスティアの腕に武器はない。短縮詠唱すら間に合わない一瞬で押さえ込むことができれば、彼女の魔法センスも統制眼も、何も関係が無い。
 しかし、ラドクリフは突然立ち止まった。視線はゆっくりと上へ向き、明らかに、レスティアの瞳を真っ直ぐに見てしまっていた。
「ら、ラド! 何してんの!」
「トネール・カルラ」
 アルマリータの注意喚起に重なって、充分な暇を手に入れたレスティアがその手に雷を生み出した。
 雷は真っ直ぐラドクリフへと向かい、直撃した。
「っぐ!」
 少年は苦しそうに呻いて、倒れ伏した。起き上がろうともがく様子すらなかった。
 ラドクリフがそのようにもがくこともしないというのは、奇妙だった。流石の彼も雷を正面から受けたなら、確かに身体の自由が奪われる。しかし、それでも指の1本くらいは動く筈だ。なれば、無駄でも何でも抵抗をするのが自然だった。
「ミ・クア・イース・アルア!」
 水の矢をアルマリータが放った。矢はレスティアへと向かい――
「トネール・カルラ・グランドゥ!」
 アルマリータが続けざまに短縮詠唱を口にした。
 伴って、水の矢の直ぐ後を、巨大な雷球が、紫電を四方へ放ちつつ、追った。
 レスティアが少しでも水に触れれば、後続の雷が通電して、彼女を戦闘不能に追い込むだろう。
 しかし、そのようなことにはならなかった。
「カンス」
 アルマリータが呟くと、水の矢も雷球も消え去った。放った魔法を中断したのだ。
 その行為に最も驚いたのは、アルマリータ自身だった。
(え? あたし、何で――)
 続いて、彼女は視線をゆっくりと上げ、レスティアの瞳を真正面からまともに見てしまう。すると、レスティアの碧眼が深紅に染まり、アルマリータの心に直接『動くな』という命令が伝わった。
 すると、事実、アルマリータは全く動けなくなった。
(目を見なくても操られる!?)
 レスティアの瞳に捉えられるよりも前、彼女は自分自身の意思に反して魔法を中断し、視線を上げてしまった。その時点から、少なからず操られていたと考えるのが妥当だろう。
「トネール・カルラ」
 ラドクリフの時と同様に、レスティアは弱い雷を放った。
 アルマリータはそれを避けることもできずに受け、倒れ伏した。腕は動く。口も動く。平常ならばまだ戦える。魔法を使うなり、レイピアを投げつけるなり、やれることはあった。
 しかし、今は何も出来なかった。正確には、何もさせて貰えなかった。
(ラディ!)
 戦う術を持たないラディアムだけが、レスティアと対峙していた。視線は下げたままで、しかし、武器を構えることもなく、短縮詠唱を口にするでもなく、ただ佇んでいた。
 それは諦めているようにも見えた。既にレスティアの術中に嵌まっているようでもあった。
 しかし、その実、彼はレスティアの統制眼を逃れていた。
(トネール・カロラだっけ? ち、違うかも…… 数語なのに何で忘れちゃうんだろ、あう……)
 それでも、反撃に移れるわけではないようだった。極限の緊張で短縮詠唱を忘れてしまうという、ある意味で期待を裏切らない残念さを見せていた。
「……不思議な子ね」
 レスティアは肩を竦めて苦笑した。統制眼をものともしないラディアムの心の強さに驚嘆しながら、武器も魔法も扱えないらしい弱々しさに落胆した。
「貴方を降しても、私の強さは認められない」
 彼女が生まれたルナティック家はルーン家の流れを汲んでいる。ルーン家はかつてソレイユ家に戦で敗れ、ブックマン家には権力闘争で敗れたという。いずれも、彼女が生まれるよりもずっと前のことである。しかし、大昔のことは、彼女にとって決して無関係では無かった。敗者の家。敗者の娘。ルーン家ゆかりの学舎ですら、一段低いものとして扱われた。歴史も今も、彼女に優しくは無かった。
「ミ・クア・アーイ・モルア!」
 力強い言葉に伴って、氷雪がレスティアを中心として吹き荒れた。
 氷雪に曝され、ラディアムは倒れ伏し、アルマリータとラドクリフの身体の自由は一層利かなくなった。
 ハイドロウ学院で試合を続行できる者は、もういない。
「勝負あ――」
 兵士が試合の終わりを告げようとした時、レスティアの碧眼が再び深い紅色に染まった。すると、兵士は直立不動の姿勢で口を噤んだ。
(ブックマンもたいしたことが無いわね。せめて、シエスタ=ブックマンやラスター=ブックマンなら……)
 レスティアはそう嘆きつつ、アルマリータの小さな身体を蹴りつけた。何度も何度も痛めつけ、次いで、ラドクリフの元へ向かった。同じように右足をたたき込んだ。
「トネール・カルラ」
 紫電が走り、ラドクリフの身体が小さく跳ねた。
 観客から非難の声が上がったが、レスティアは気にしなかった。敗者は勝者の都合でどのようにも扱われる。当然のことだった。
(殺されないだけマシではないかしら。シエル戦争でカテリーナ=ルーンは死んだ。他にもきっと何人も死んだ。生き残った私達は差別され、現在に至っても少なからずその影響を受けている。八つ当たりくらいいいじゃない)
 再び、レスティアは、倒れるアルマリータの元へ向かい、踏みつけようと足を上げた。
 しかし、彼女の足は、アルマリータの肩ではなく、他の者の背を踏みつけた。
「……邪魔よ。どきなさい」
 笑みの形に細められた碧眼は、ラディアムの小さな背中にそそがれていた。
 ラディアムは痛みに耐え、泣きながら首を振った。
「ミ・クア・アーイ・アルア」
 短縮詠唱に伴って生じた氷の矢が、彼の肩に突き刺さる。致命的な傷ではない。しかし、相当な痛みを感じているだろう。
 それでも、ラディアムはアルマリータを庇い続けた。
 レスティアがゆるやかな微笑を浮かべた。
「無力ながらも懸命に友を庇う。感動的ね。ふふふ」
 楽しそうに口の端を上げ、月の狂い姫は言った。彼女はそうしてから、突然、高く高く哄笑した。
 聞く者の心を凍てつかせる笑い声が、闘技場を駆け抜けた。
 狂おしい歓喜の音色がようよう静まり、月の姫は楽しそうに、本当に楽しそうに微笑んだ。
「貴方、強いじゃない」
 強きをくじけば、認められる。月はきっと敗者の代名詞ではなくなる。
 レスティア=ルナティックの歪んだ想いが、いよいよ弾けた。

 8年前のことだった。ブックマン家には5歳の幼子が3名いた。アルマリータとラドクリフ、そして、ラディアムである。彼らはブックマン領内で英才教育を受けていた。しかし、その結果ははっきりと分かれていた。
 アルマリータとラドクリフは勉強も運動もよく出来て、大人にもたびたび褒められていた。
 一方で、ラディアムは全てにおいて劣っていた。唯一、歴史の勉強が得意だったくらいだった。
 そんな彼らをまず大人が比較し、暗に差別した。そして、子供は大人を映す鏡であり、アルマリータとラドクリフもまたその例外では無かった。彼らもまた、ラディアムを下に見た。
 ラディアムは2人から苛めを受け始めた。身体を叩かれる程度ならば日常茶飯事で、大切な物を隠されたり、それどころか、奪われたり、泣かされない日はなかった。
 けれど、アルマリータとラドクリフは、全く罪悪感を覚えていなかった。悪いのはラディアムだとさえ認識していた。彼らがラディアムを苛めるのは、ラディアムが無能であるが故だった。なれば、悪いのは無能なラディアムではないかと考えていた。
 大人は優秀なアルマリータとラドクリフを贔屓し、ラディアムを無視していた。そのように扱いに大きな違いが出るということは、つまり、ラディアムのように無能であることは悪いことに違いない。その正誤はともかくとして、子供にでも分かる簡単な理屈がそこにはあった。
 そんな折、彼らはブックマン領内にある森に迷い込んだ。迷い込んでさまよい歩いた末に、彼らは1匹のオークに遭遇してしまった。アデウス棟の地下で警護用に飼っているものが逃げ出したのだった。
 アルマリータもラドクリフも、勉強や運動で優秀な成績を収めているとはいっても、5歳児でしかなかった。当然ながら、オークに対抗する術などなく、それ以前の話として、恐怖で身体が動かなかった。
 しかし、彼らのそのような様子を瞳に映したラディアムだけは、オークの前に立ち塞がった。恐怖で涙を流しながらも、その瞳には強い意志の光が宿り、両腕を広げて従姉妹たちを庇うように雄々しく在った。
 オークは手にしていた棍棒を大きく振り上げ、ラディアムの小さな頭へと勢いよく振り下ろした。幸い、その一撃は掠っただけであったが、ラディアムの足腰を立たなくするには充分な威力があった。
 それでも、ラディアムは震える足を手で何度も叩いて、立ち上がろうとした。アルマリータとラドクリフを庇おうとした。
 棍棒がもう1度振り下ろされ、此度は、ラディアムの右肩に当たった。肩の骨が砕けた。
 衝撃にラディアムは倒れ伏し、止め処なく涙を流した。痛みが理由ではなかった。怖がる従姉妹を守ることができないことが悔しかったのだ。
 その時、森の木々をぬって、風の化身のような少女が姿を見せた。当時17歳のラケシス=ブックマンであった。彼女は手にした大剣を振り下ろし、棍棒を持つオークの腕を切り落とした。続けて、大剣を横に薙ぎ、オークの胸を深く傷つけた。傷口からは血液がとめどなく流れ出て、しばらくすると、オークは大地に倒れ伏して動かなくなった。
 魔物の末路になど一切の関心を見せず、ラケシスはラディアムを抱き起こした。傷口を検分し、直ぐに立ち上がった。
「……本家に詰めているお医者様の元へ運びましょう」
 緊迫した声が、ラディアムの状態を物語っていた。
 ラケシスは踵を返しつつ、アルマリータとラドクリフについてくるように言った。数刻の後、ブックマン家の3棟が見えてきた。ラケシスはラディアムのみを連れてアデウス棟へと消えた。
 翌朝、アデウス棟からウィダミア棟へラディアムが運ばれた。裂傷や打撲が全身にあり、肩の骨が折れていたが、命の危険は去ったとのことであった。父母や兄姉は胸をなで下ろし、安堵の笑みを浮かべた。
 ラケシスがアデウス棟へ戻ろうと、ウィダミア棟の玄関扉を潜ると、窓から棟内を覗いている者たちがいた。アルマリータとラドクリフであった。彼らは安堵と悔恨により、奇妙な表情を浮かべていた。
 小さくため息をついて、ラケシスは彼らの頭を軽く撫でた。
「年寄り連中――大人は好き勝手に言うでしょう。けれど、それは貴方達が望むモノですか? 老害共の傀儡となりたいのならばそれもいいでしょうが、今一度考えなさい。貴方達が目指すべき強さというものを」
 ラケシスの言葉は5歳児には難しかった。けれど、彼らは直感で理解した。きっと、自分たちが間違っていたのだと。そして、涙した。それでも、彼は助けてくれたのだと。

「アルマリータ! ラドクリフ!」
 闘技場中に大音声が響き渡った。当然ながら、倒れ伏す2者の耳にも届いた。
「貴方達は、あの頃のままだとでも言うつもりですか!?」
 その問いの真意を理解した者は多くなかった。
 しかし、それでよかった。伝わるべき相手にさえ伝われば、問題などなかった。
 彼らは彼女の言葉で奮起した。
 アルマリータもラドクリフも、同時に右腕のみを動かした。彼らの右腕にはそれぞれ、レイピアと長剣が握られていた。刃は――彼ら自身の右股と左腕を傷つけた。
 観客席から悲鳴が上がった。レスティアを非難する声もまた、そこここから上がった。
 しかし、当のレスティアもまた彼らの行動に驚いていた。
 レイピアを杖代わりにしてアルマリータが、左腕をだらりと垂らしながらラドクリフが、ゆっくりと立ち上がった。その顔には疲労の色が濃く見えつつも、気力は充分に満ちているようだった。
「妙に攻撃が手ぬるいと思ったら、やっぱり痛みで元に戻るのね」
「だな。まあ、そもそも統制眼にかかった時点でダメダメだけどな。お互い」
 腿から、腕から、血を流す2者を瞳に入れて、レスティアが歓喜の笑みを浮かべた。
 彼女が認められるための強者(いけにえ)が増えたのだ。

 貴賓席に腰を下ろしたまま、ティアーガン=ブックマンがくつくつと笑っていた。その瞳は脇に控える女性へと向いていた。
「お前の大声を耳にすることなど久しくなかったな」
「申し訳御座いません」
 他国の王侯貴族や各学園の学長の注目を浴びつつ、ラケシスは無表情に淡々と謝罪した。声音は落ち着いており、先程の荒々しさは微塵もない。
 その普段と変わらぬ様子にブックマン家当主は苦笑を浮かべ、視線を決勝の舞台へ移した。
 レスティアと対峙するアルマリータやラドクリフとは対照的に、ラディアムは気が抜けたように地べたに這いつくばっていた。
「ストロ・デタミナ<強固なる意志>か。お前から二つ名の候補を聞かされた時には疑問であったが、なるほど、その名に恥じぬ心の強さだな。面白い小僧だ」
 それは独り言に近い、ごく小さな声量の言葉だった。しかし、注意して聞き耳を立てている者がいれば、聞きとがめられないとも限らなかった。
「発言にはお気を付けください、ティアーガン様。マーヴェル様のお耳にでも入れば、要らぬ誤解を生まぬとも限りません」
 ラケシスは両の眼を細め、咎めるように囁いた。
 ティアーガンは再び苦笑してから、闘いの行方へと意識を戻した。