帰宅してから夕飯までの時間、長篠夏茄(ながしのかな)は宿題をしていた。しかし――
ばあんッ!
「夏茄! 豆まきするぞッッ!!」
邪魔者――叔父の長篠冬流(とうる)が現れた。
夏茄は鬱陶しそうに振り返る。
「まかない」
とん。
素早い返答を意に介さず、冬流は夏茄の勉強机に四角い箱を置く。煎った大豆が入っていた。
「やるぞ」
「やらない」
ぷいっと机に向き直り、宿題を再開する夏茄。
しかし、冬流は――
ぱらぱら。
大豆が夏茄の頭にぱらぱらと落ちる。
「やるぞー」
「………………」
ぱらぱら。
「夏茄ー」
「………………」
ぱらぱら。
イラっ。
がしッ。
夏茄の手が箱を掴んだ。
びしびしびしびしッッ!!
「………………!!」
無言で大豆を力一杯投げる夏茄。
「だはははははっ! 鬼さんこちら手のなる方へ!」
ダダダダダダダっ!
冬流は楽しそうに部屋の外へ逃げ出した。いつの間にやら鬼の面を被っている。
「鬼は叔父さんでしょ!!」
ダダダダダダダっ!
目つき鋭く、夏茄が冬流を追う。
彼女が宿題を終えるのはまだまだ先になりそうだ。