炬燵と蜜柑と東征と
2013年建国記念の日編。炬燵で食べる蜜柑は美味である。東征した神武天皇の祖先、木花開耶姫命は美姫である。

 もぎゅもぎゅ。
「建国記念の日だなー」
 もぎゅもぎゅ。
「そーだねー」
 長篠家の居間にて、炬燵に深く身を沈めた2者が呟いた。それぞれ蜜柑の皮をむき、どんどんと口に運んでいる。
 もぎゅもぎゅ。
「神武天皇陛下も、何を好きこのんでこんな寒い時期に建国なさったのかねー」
 もぎゅもぎゅ。
「そーだねー」
 長篠冬流(ながしのとうる)の面倒なフリに、長篠夏茄(ながしのかな)は生返事を返した。まともに取り合う気は一切無い。
 もぎゅもぎゅ。
「寒いの大好きだったのかねー。冬将軍だったんかなー」
 もぎゅもぎゅ。
「そ、そーだねー」
 夏茄が頬にひと筋の汗を垂らして、少しばかり口ごもった。叔父上殿の奇妙な見解に、思わず突っ込みそうになってしまったためだ。
 もぎゅもぎゅ。
「寒波まんせー。はらしょー。はましょー」
 もぎゅもぎゅ。
「……そーだ、ねー」
 日本語圏から逸脱したコメントを耳にして、姪御は顔を顰めて耐える。摩訶不思議な言葉の攻勢に身を硬くして備えた。
 もぎゅもぎゅ。
「神武たん萌えー」
 もぎゅもぎゅ。
「……………そー、かも……ね……………」
 夏茄は、耐え難きを耐え、忍び難きを忍んだ。耐えきった。忍びきった。
 もぎゅもぎゅ。
「……………ちっ」
 もぎゅもぎゅ。
(……………ふぅ。休みの日に面倒に巻き込まれたくないよね、うん)
 折角の休日、誰も彼も嫌な気分を味わいたくなど無い。姪御の自衛もやむなしだろう。
 叔父は悔しそうに、乱暴な所作で蜜柑の皮をむいていた。

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