夏と冬の昔
長篠秋良(ながしのあきら)と長篠春風(はるか)による、長篠冬流(とうる)、夏茄(かな)の昔話。

「懲りずにやってくれるな、作者」
「前のやつが『1日で消すシリーズ』の名の通り、既に消えているから、また自己紹介からかしらね」
「そうだな。こほん。私は長篠秋良(ながしのあきら)。おじとめいシリーズの長篠冬流(ながしのとうる)の兄であり、長篠夏茄(ながしのかな)の父だ」
「わたしは長篠春風(ながしのはるか)といいます。秋良さんの妻です。当然、冬流ちゃんは義理の弟で、夏茄は娘ね」
「今回は最初からお題を渡されている。『冬流と夏茄の昔について』だそうだ」
「以前は秋良さんとわたしを掘り下げる気がちょっとはあったはずなんだけど、今回は端から冬流ちゃんたちの話なのね。作者、死んじゃえばいいのに」
「……春風。笑顔で毒を吐くのはまたの機会にしよう」
「はい。旦那様の仰せのままに。えーと、冬流ちゃんと夏茄の昔の話といえば、何を置いても子育てする高校生の冬流ちゃんよね」
「そうだな。あの頃は私も春風も働いていて、冬流は冬流でいわゆる引きこもりというやつだったから、育児面でつい甘えてしまっていたな。冬流はなんでもソツなくこなすから、夏茄の世話も文句を言いながらきっちりこなしてくれていた。しかし、よくよく考えるとひどい親だ」
「そうね。思い切ってわたしが仕事辞められればよかったんだけど、経済的な問題とか、結構責任ある仕事を任されちゃってたこととか、色々とあって出産後すぐに復帰したものね」
「そうだったな。それで冬流に夏茄をまかせっきりにしていたら……」
「ええ。忘れもしないわ。夏茄が1歳5か月の頃によちよちと冬流ちゃんへと近づいていき、愛くるしい笑みを浮かべながら発した記念すべき第1声が『とーるちゃ』だったのよね。さすがにショックだったわねー」
「平日はともかく、休日は懸命に一緒に過ごしてたんだがな。平日も休日も一緒の冬流には敵わなかったということだな」
「そして、それを機にわたしは仕事を辞めたのよね。いつまでも冬流ちゃんに任せてるのも悪いと思ってたし、それに何より、負けたくなかったし」
「私も辞めたかった……」
「ふふ。秋良さんったら、まだあのことを気にしているのね」
「当然だろう! 私はご存じのとおりブラコンだ。昔から冬流のことが可愛くて仕方がない。しかし、あの時ばかりは弟を憎まずにはいられなかったゾ!」
「おおげさねぇ」
「おおげさなものか! 忘れもしない。夏茄が8つの時だ。TVでウェディング特集をやっていて、そ、そして――」
「たしか『わたし、おおきくなったらとーるちゃんとけっこんするー』だったっけ?」
「うおおおぉおぉおおおおぉおおぉお!」
「やれやれ。うふふ。何だか話がずれてきたし、ここら辺でお開きにします。それではみなさん、また会う日まで」
「うわああぁあん! 夏あぁあ茄あぁあ!」

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