「僕は幸福なのだと、そう思うのだ」
石段に腰掛け、少年は呟いた。そして、しばし口をつぐむ。返答を期待したのやもしれない。
しかし、誰からも応えは無かった。
少年は続ける。
「彼女は僕の恋人ではない。しかし、よき友人で在る。そして、これからもずっと、僕は彼女のよき友で在れると、そう自負している。それはとても幸福なことだろう。ずっと、共に、愛する者といられるのだ」
風がそよそよと流れ、木々の葉が揺れる。耳心地のよい音が鳴る。
少年は、地面に向けていた瞳を上げる。そして振り返り、問う。
「なあ、そうは思わぬか?」
轟と一陣の風が駆け抜ける。そして、
ガラン。ガラン。
綱が大きく揺れ、鈴が鈍い音をたてた。
本来、神の注意を引くべき鈴の音が、少年の問いに応えた。
くすり。
少年は小さく笑う。
「嘘でも嬉しいぞ」
パチン。
少年の指で弾かれた硬貨が宙を舞った。
ちゃりん。
ガラン。ガラン。
ぱん。ぱん。
――とこしえに共に……