君がいた物語

 足元の縁石が、とても大きく見えた。
 一歩を踏み出さなければいけない。
 躓かないで、先に進まなきゃ。

 何があったって、時間は流れる。時は過ぎ去る。
 あの日、君の話は終わった。
 でも、僕の話は続く。他者の話もまた。
 それが当たり前で、世界だ。
 君が幸せだったか、不幸せだったか、解るのは君だけだ。
 だから、僕は考えない。振り返らない。
 君がいた物語は過去のもの。

 足元の縁石が、とても大きく見える。
 越えられるのだろうか?
 この憎らしく、とても尊い物語を。

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